沖縄発!あれこれ地域情報ブログ

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JAの牛肥育事業撤退 沖縄県の「不作為」が原因というのは言い過ぎか!?

 2021年12月15日、地元紙に、『牛肥育2施設 民間に譲渡』『JA、本島から事業撤退』との見出し記事が載った。JAが今帰仁肥育センター、玉城農場を民間企業に譲渡したとのことだ。

 ちなみに、畜産事業は、a. 母牛を飼養して仔牛を生ませ、月齢9カ月になるとセリ市場に出荷する繁殖事業、b. セリで購入した仔牛を30カ月程度まで育て、枝肉として市場で販売する肥育事業の2通りがあり、今回のJAが撤退というのは後者の事業だ。

 これまで、JAは、小規模農家の畜産業者に対して生産支援やセリの買い支えなどのいわゆるセーフティネット機能の役割を担っていたが、いつまでも不採算事業を続ける訳にはいかず、やむを得ず撤退に至ったものと理解している。

 不採算の理由は何かと言うと、生産農家の高齢化による生産性の低下、餌となる飼料価格の高騰など、要因はいろいろあるが、端的に言えば、牛肉がコストを吸収できる価格で売れていないことに尽きる。

 コロナ前は、インバウンド入域者の大幅な増加に伴い、ホテルや飲食店の需要も旺盛で、和牛ブームも追い風となって、採算性は確保出来ていたが、コロナ拡大後は、それもなくなり、もとぶ牧場のような大規模かつ資金力もある事業者を除いては、ほとんどの県内の肥育農家は経営悪化に苦しんでいるのが実態ではなかろうか。

 では、どのような対策があるか。沖縄県は、東南アジアという数十億人の消費人口がいる国々に地理的に近く、かつ、海外では"和牛"は高級食材として高い値段で取引されている。そこを狙っていけば良いのではと思われるかも知れないが、大きな障壁がある。

 生肉の輸出に関しては、輸出相手国ごとの輸出認定基準をクリアする必要があり、その中でも「食肉加工処理施設」のHACCP基準の順守が絶対条件となっている。

 本土の畜産業の盛んな県(近隣県)は、ほとんどがHACCP認定工場を設置しているが、沖縄県にはそれがないのだ。

 もし、沖縄県から海外に輸出するとした場合、一番近い処理施設のある鹿児島県まで、牛を生きたまま運搬し、トサツ後に沖縄まで送り戻し、それから海外へ輸出する流れとなり、輸送コストだけでも膨大となり現実的はない。

 他方、沖縄県(行政)は、沖縄県をアジアのハブ拠点として位置づけ、平成27年9月に「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」にて各分野での産業成長戦略の目標を定め、以降毎年、現状と課題を踏まえた振り返りを行っている(直近:令和2年3月改訂版)。

 その計画において、畜産の現状と課題については、

 〇食肉加工処理施設においては、HACCP基準への対応に加え、輸出に際しては輸出国の認定基準を満たす必要がある

 とし、その取組方針としては、

 〇食肉処理施設の輸出国別の認定取得に向けた関係機関との連携強化を図る

 としている。しかし、これが平成29年から同じ内容が繰り返されているのだ。遅々として進捗していない。

 関係機関というのはもちろん国(農水省)のことだ。戦略構想推進計画も国の承認を経て策定され、課題も対応策も国と共有しているにも関わらずだ。畜産を基幹産業として位置づけするならば、まずはHACCP認定工場の整備が最優先だ。

 アジアに直に輸出出来るようになれば畜産業は生き返る。県も不作為と言われるのは心外かも知れないが、いつまでにHACCP認定を取得するつもりなのか説明責任を果たして欲しい。すべての肥育農家がそう思っているのは間違いないだろう。

出典:

戦略構想推進計画(一部抜粋): https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/shoko/asia/senryaku/documents/documents/03_r0203_azia_keikaku_kaitei.pdf

輸出牛肉施設一覧例(台湾):https://www.maff.go.jp/j/shokusan/hq/i-4/attach/pdf/yusyutu_shinsei_asia-319.pdf